レガシーCOBOL資産とは?現状の課題と将来へのリスクを初心者向けに徹底解説!
生徒
「先生、最近ニュースなどで『レガシーシステム』や『COBOLの2025年の崖』という言葉をよく聞くのですが、どういう意味ですか?」
先生
「レガシーとは『遺産』という意味です。長年、銀行や会社を支えてきた古いコンピュータシステムのことを指します。実は、その中心にいるのがCOBOLという言語なんですよ。」
生徒
「遺産なら大切にすれば良い気がしますが、何か問題があるんですか?」
先生
「良い視点です。歴史があるからこその信頼性と、古さゆえの難しさが共存しているんです。今日はその現状と課題を紐解いていきましょう!」
1. レガシーCOBOL資産とは?
まず、レガシー資産(れがしーしさん)について説明します。これは、数十年前から使い続けられている古いプログラムや、それらが動いている巨大なコンピュータ(メインフレーム)を指します。
COBOLは1959年に誕生した、非常に歴史の長いプログラミング言語です。 その計算の正確さから、銀行の口座管理、保険の契約管理、役所の住民基本台帳など、私たちの生活に欠かせない非常に重要な場所で今も現役で動いています。 「古いからダメ」ではなく、「長年大きな事故もなく動き続けてきた信頼の証」でもあるのです。
しかし、あまりに長く使われすぎたために、現在では多くの課題が山積みになっています。これが社会問題にもなっているレガシーシステムの現状です。
2. 最大の課題:2025年の崖
経済産業省が発表した「DXレポート」の中で提唱された言葉が、2025年の崖(にせんじゅうごねんのがけ)です。 これは、日本企業が古いシステムを使い続けた結果、維持費が高騰したり、新しい技術に対応できなくなったりして、大きな経済損失を生む可能性があるという警告です。
パソコンを触ったことがない方でも、家で例えると分かりやすいでしょう。 築50年の家を無理に増築し続けて住んでいるような状態です。 どこに柱があるか分からず、修理しようにも職人がいなくなり、維持費だけがどんどん上がっていく。 そんな状態が、日本の企業システムの中で起きているのです。
3. 深刻な人材不足とブラックボックス化
現在のCOBOL資産が抱える深刻な問題の一つに、人材不足(じんざいぶそく)があります。 長年COBOLを支えてきたベテラン技術者たちが定年退職を迎え、その技術を継承する若者が不足しています。
さらに困ったことに、古いプログラムは継ぎ足しを繰り返した結果、中身が複雑になりすぎています。 これをブラックボックス化(ぶらっくぼっくすか)と呼びます。 「なぜ動いているのか誰も完全には把握していないけれど、止まると困るから触れない」という、爆弾を抱えているような状態のシステムも少なくありません。
中身がどうなっているか見えず、入力と出力の結果しか分からない状態のことです。修理や改良が極めて困難になります。
4. 維持管理コストの増大
古いシステムを動かし続けるには、莫大な維持管理コスト(いじかんりこすと)がかかります。 最新のコンピュータであれば安く済む処理も、メインフレームという専用の巨大な機械を動かすには多額の電気代や契約料が必要です。
また、トラブルが起きたときに対応できる人が少ないため、修理費用も高額になりがちです。 企業が新しいサービスを作ろうとしても、予算のほとんどがこの「古いシステムの維持」に消えてしまい、未来への投資ができなくなっているのが現状です。
5. 新しい技術との連携が難しい
今の時代、スマートフォンアプリで銀行残高を見たり、買い物をしたりするのは当たり前です。 しかし、COBOLのレガシー資産は、このような最新のインターネット技術(Web連携)を想定して作られていません。
無理に連携させようとすると、変換作業に時間がかかったり、システムの動作が重くなったりします。 「最新のスマホに対応したいけれど、元のシステムが古すぎて追いつかない」というジレンマが、企業の成長を阻む壁となっています。
6. プログラム構造の課題例
具体的に、古いCOBOLプログラムがどのような課題を抱えているのか、構造的なイメージを見てみましょう。
*--- 古い書き方の例:GO TO文の多用 ---
PROCEDURE DIVISION.
MAIN-LOGIC.
IF DATA-A = "1" GO TO ERROR-RTN.
PERFORM CALC-RTN.
IF DATA-B = "0" GO TO FINISH-RTN.
ERROR-RTN.
DISPLAY "エラーです".
GO TO MAIN-LOGIC.
FINISH-RTN.
STOP RUN.
このように、処理があちこちに飛び火するGO TO文が多用されていると、プログラムの流れを追うのが非常に難しくなります。 これを「スパゲッティプログラム」と呼び、保守や改良を妨げる大きな要因となっています。
7. モダナイゼーションへの道
これらの課題を解決するために行われるのが、モダナイゼーション(近代化)です。 単に新しくするだけでなく、大切な資産(データやロジック)を活かしながら、現代の環境でも動くように作り直す作業です。
| 手法 | 内容(分かりやすい説明) |
|---|---|
| リホスト | 中身は変えず、動かす機械だけ最新に変える(引っ越し) |
| リライト | COBOLをJavaなどの現代の言語で書き直す(翻訳) |
| リプレース | 一から全く新しいシステムを作り直す(建て替え) |
8. データ移行と安全性の確保
レガシー資産からの移行で、最も神経を使うのがデータ移行(でーたいこう)です。 数十年にわたって蓄積された顧客データには、独特のルールや形式が含まれていることがあります。
新しいシステムに変えた瞬間、お客様の預金残高が1円でもズレてしまえば、社会的な信用を失います。 そのため、モダナイゼーションでは「いかに安全に、正確にデータを引き継ぐか」が、プログラミング技術以上に重要視されます。
9. ドキュメントの欠如という壁
意外な課題として、ドキュメント(説明書)の欠如があります。 何度も改修を繰り返すうちに、プログラムと説明書の内容がズレてしまい、今となってはプログラムそのものが唯一の正解という状況です。
移行を検討する際には、まず現行のプログラムを解析して、「何が行われているのか」をリバースエンジニアリング(逆解析)して文書化するところから始めなければなりません。 この「調査」だけでも、数ヶ月から数年かかる巨大なプロジェクトになることがあります。
10. 今後求められる視点
COBOLのレガシー資産は、決して過去の遺物ではありません。 今も社会を支える現役のインフラです。 大切なのは「古いから捨てる」ことではなく、その中にある重要な計算ルールや業務の知恵を、どのようにして次の世代のテクノロジーへ繋いでいくかという視点です。
COBOLを知ることは、コンピュータの歴史を知ること。 そして、現代のシステムが抱える課題を解決するためのヒントを学ぶことでもあります。 レガシー資産の活用は、これからのIT社会における大きなテーマなのです。